談話
ウィールス學の現況
川喜田 愛郞
1
1東京大學傳染病研究所
pp.111-115
発行日 1949年8月1日
Published Date 1949/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905464
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病原細菌學の中心問題が感染の病理學にあることを人が認めるならば,その姉妹科學としてはじまつたウィールス學が,同じく感染現象をその研究の出發點としてもつたことによつて強く病理學的な色彩を帯びていた理由はこれを理解するに難くないはずである。だがウィールスの科學は今日では病理學の領域から大きくはみ出して,生物學の根本問題と絡み合うかずかずの問題を提起しつつあるようにみえる。その發展のすじみちを辿り,今日におけるウィールス學の主要な問題の所在を指摘し,できるならば若干の天氣豫報を試みたい,というのが本講演の主旨である。
新らしいウィールス學がタバコのモザイク病のウィールスに關するStanley(1935)の業績にはじまることは概ね誰も異存のないところである。
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