研究報告
肝吸蟲終宿主としての家鴨および第二中間宿主としてのライ魚
小宮 義孝
1
,
近藤 末男
1
1前橋醫大・衞生學教室
pp.31-33
発行日 1949年3月25日
Published Date 1949/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905440
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肝吸蟲(clonorchis sinensis)は人類をはじめとして,犬,猫,鼠,鼬など廣く肉食性の哺乳類にその自然感染が認められ,また實驗的には家兎,モルモツト等その他にも廣く哺乳類にこれを感染せしめ得るのであるが,鳥類のあるものがその終宿主たりうるか否かについては,なほ論議の餘地がのこされてゐる.肝吸蟲の鳥類への自然感染をはじめて認めたのは淺田氏(1920)である,即ち氏は6羽の五位鷺を檢して内1羽の膽嚢内に13條の肝吸蟲の自然感染を認め,しかもこれらはその子宮内にミラチイデイウを完備せる卵を藏し,さかんに排卵しつつあつた旨を報告し,さらに五位鷺に實驗的にホンモロコを試食せしめて45日目に剖見し,その1羽に形態は小なるも5條の同吸蟲を認めた,同時に家鴨にフナ,ホンモロコを試食せしめてその1例において膽嚢内に7條の同蟲を見出したと報告してゐる.ただしこれは,ふつう他の宿主における肝吸蟲に比して形態は小さかつたという.
しかるに田部氏(1920)は,アヒル(Anas domestica),アヒガモ(Anas boschas)に實驗的に同蟲を寄生せしめんとしたるも,陰性に終り,また9羽のサギに同樣の實驗を行つたが,同吸蟲の發育のきわめて初期のものが,盲腸,大腸部に散在して大部分はすでに死亡し,排泄される途次にあつたと報じている.
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