話題 第18回北米神経科学会より
発生神経科学のトレンド
鈴江 俊彦
1
Toshihiko Suzue
1
1東京医科歯科大学医学部第一生理学教室
pp.153-155
発行日 1989年4月15日
Published Date 1989/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905255
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交錯するフリーウェイの夜の闇に浮かび上がったトロントのダウンタウンは超高層ビル群のあかりが美しく神秘的であった。空港から乗ったタクシーの運転手は,トロントが米国の大都会に比べ犯罪の少ない夜も安全な都市であることを力説した。確かに,冬枯れしたトロントはやや無機的な感じはするが米国の都市によくあるような退廃と犯罪の臭いのしない清潔な街並みであった。北米神経科学会議(1988年11月13日〜18日)の開催されたトロント・コンベンションセンターは街の南部,オンタリオ湖の北岸に程近い,真新しい巨人な施設であった。
北米神経科学会議の魅力はなんであろうか。すくなくとも私にとってそれは圧倒的な情報量の多さである。参加することによって神経科学の最前線のすべて(あるいはかなりの部分)を見たという充実感に浸ることができる。一般演題7,809,そのうち口演1,456題,ポスターセッション6,353題。ポスターセッションの会場は屋内であるが,巨大な体育館というよりは野球場のサイズでしかも1日を午前と午後の二組に分けて入れ替えし,それが5日間続けられた。私はいつもの例に洩れず発表の準備が遅れ自分のスピーチのリハーサルに学会の前半を費やし,後半も特に自分が強く興味を引かれるところを聞く以外は人とのコミュニケーションに時間を使ってしまった。
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