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特集 視覚初期過程の分子機構
桿体外節における光情報伝達機構の理論モデル
Theoretical models for visual transduction mechanisms in rod outer segments
市川 一寿
1
Kazuhisa Ichikawa
1
1日本アイ・ピー・エム(株)大和研究所
pp.276-283
発行日 1987年8月15日
Published Date 1987/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904998
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外部環境の情報を獲得する機能としての視覚は,生物が持っている重要な感覚の一つである。脊椎動物の視覚に対して光刺激として入力された光量子は,桿体細胞の外節にある視物質によって吸収され,その発色団を光異性化する。この反応がトリガーとなり,一連の生化学反応に変化がひき起こされ,その結果として外節形質膜のナトリウムイオン透過性が減少し,過分極性の電位応答が発生する1-4)。桿体外節には,動物種によって若干異なるが約2,000枚の円板状の構造があり,この円板は外節の形質膜からは切り離されている。視物質ロドプシン(Rh)は円板膜に内在性タンパク質として存在するので,ロドプシンの光吸収という出来事を形質膜に伝えるには,何らかの伝達物質が必要である。その候補として,カルシウムィオン5)とcGMp6-8)が注目されてきた。最近,cGMPが直接外節形質膜のイオンチャネルの開閉を制御し,ナトリウムイオン透過性を変化させていることが実験的に示され9),cGMPが伝達物質としてほぼ認められつつあると言えよう。
これまでに桿体外節における光情報伝達の分子機構に関する多くの実験データが蓄積され,定量的モデルを構築できるようになってきた。このようなモデル化により,光情報伝達機構の理解が一層進展することが期待される。本稿ではこれまでに発表されたモデルを概観し,今後の方向を展望する。
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