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国際シンポジウム「筋収縮の分子的機構」
杉 晴夫
1
Haruo Sugi
1
1帝京大学医学部生理学教室
pp.165-169
発行日 1987年4月15日
Published Date 1987/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904982
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自然科学の各分野の学問の本質的な進歩が不連続におこることは歴史が示すところである。本質的な進歩の間にはいわゆるノーマルサイエンスの期間が存在し,細部において多くの知見が積み重ねられるが,その学問の中心となるドグマに影響を及ぼすには至らない。筋収縮研究の分野での中心的ドグマは,1950年代前半にH.E.Huxleyらが筋フィラメント格子の構造を明らかにし,収縮が二種の筋フィラメント(アクチンフィラメントとミオシンフィラメント)間の相対的な滑りによっておこる事実の発見によって成立した。ミオシンのATPase活性とアクチンへの結合能はミオシン分子頭部に局在しており,この頭部はミオシンフィラメント形成時に側方に突出してクロスブリッジとなる。クロスブリッジがATPの化学エネルギーを力学エネルギーに変換するしくみは,一般にクロスブリッジがアクチンフィラメントと結合→変型→解離の反応サイクルを繰り返すことによって,アクチンフィラメントをミオシンフィラメントの中央部にたぐり込んでゆくことによるとみなされてきた。
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