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特集 ゲノムの構造
α-アミラーゼ遺伝子の構造—臓器特異性を中心に
Structure of α-amylase gene
中村 祐輔
1
,
松原 謙一
Yu-suke Nakamura
1
,
Ken-ichi Matsubara
1大阪大学細胞工学センター遺伝子構造,機能調節部門
pp.258-263
発行日 1984年8月15日
Published Date 1984/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904594
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α-アミラーゼは炭水化物のα-1,4グリコシド結合を水解する代表的な消化酵素の一つであり,ヒトでは膵臓と唾液腺において,ラット・マウスではこれらの他に肝臓においても産生されている。このα-アミラーゼはLDH・ピルビン酸キナーゼ・アルドラーゼなどと同じくアイソザイムの一種である。アイソザイムの定義は様様であるが,狭義には同一基質に対して同一の触媒作用を有している酵素でありながら,遺伝子支配の異なるものが2種以上あるものとされている。分子遺伝学的にこれらアイソザイムが注目されているのは,臓器間の構造の差やそれに伴う発現の特異性を調べることが,真核生物における遺伝子の発現機構を解明する重要な手がかりになると考えられているからである。これらアイソザイムのうち,最も早くから研究が開始され,最も研究の進んでいるのがα-アミラーゼである。1977年に,MacDonald1)らがイヌの膵のα-アミラーゼmRNAを精製して以来,ラット2)・マウス3)・ヒト4)と次々にmRNAの一次構造が明らかにされ,臓器間の差も明らかにされつつある。ヒトでは臓器間の特異性のほかに,癌──特に肺癌や卵巣癌──の一部にα-アミラーゼを異所性に産生するものが報告され5〜7),腫瘍マーカーとして注目されている。筆者らは単に臓器特異性のみならず,癌化に伴う遺伝子の活性化という点にも興味をもち研究を進めてきた。
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