Japanese
English
解説
海産毒Palytoxinの生理活性
Biological activities of palytoxin
伊藤 勝昭
1
,
浦川 紀元
2
Katsuaki Ito
1
,
Norimoto Urakawa
2
1宮崎大学農学部家畜薬理学教室
2東京大学農学部家畜薬理学教室
pp.319-325
発行日 1982年8月15日
Published Date 1982/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903552
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フグ毒の成分tetrodotoxinの分子構造が決定され,その作用機序が興奮膜のNaチャンネルの特異的阻害であることが解明された1964年が1つのエポックとなって以来,天然毒は様々な角度から多くの研究者の関心を集めるようになってきた。天然毒が研究対象となるのは,中毒の被害をいかに防ぐかという防御的な動機およびその生理活性を生かして新しい医薬を開発していくという応用的な動機のみならず,特異的な作用機序をもつ物質については複雑な生体機構解明に用いるという基礎生物学への貢献の側面がある。とくに後者のような毒物の利用価値に関する認識が広まるにつれて,積極的に新しい毒物を探索する試みがなされてきている。なかでも海洋には数千種にのぼる有毒生物がいると推定されるが,そのうち多少とも研究の対象となったものは数%にすぎず,化学構造と薬理作用が解明されたものは50に満たないといわれ1),海産毒の研究は始まったばかりであるといえよう。
このような状況において1971年から73年にかけて日本と米国で腔腸動物の一種イワスナギンチャクPalythoaからpalytoxinが分離精製された。しかし,その化学構造の決定には約10年の歳月を要し,1981年に漸く成功した。
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