Japanese
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特集 生物由来の神経毒
ボツリヌス毒
Botulinum toxin
廣川 信隆
1
Nobutaka Hirokawa
1
1東京大学医学部解剖学教室
1Department of anatomy, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.972-982
発行日 1980年10月10日
Published Date 1980/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431905216
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I.ボツリヌス毒とは
ボツリヌス菌***(Clostridium botulinum)の産生する毒は,きわめて強力な致死性を持つ蛋白で,人間の場合0.5〜5μgが致死量であるといわれる29)。この毒素は,DEAE-sephadexにより分子量約150,000のα成分と分子量約500,000のβ成分に分けられ,前者が神経毒で後者は赤血球凝集素である22)。ボツリヌス中毒の原因となるのは,この神経毒で,毒素の抗原性の違いから,ボツリヌス菌にA,B,C,D,E,Fの六つの異なった株が報告されている。地理的分布に差があり,またCとDは主に動物に中毒症状を起こさせるので知られている22)。神経毒は,さらに分子量50,000のA鎖と分子量100,000のB鎖よりなり,基本的にはジフテリア毒やテタヌス毒と同様な構造をしていると考えられる。この神経毒は,末梢神経系のコリン作動性神経系に作用し,骨格筋の麻痺や副交感神経系の麻痺を起こすことで知られる。この小論では,主にボツリヌス毒の作用機構について著者らがカエル胸皮筋(cutaneous pectoris muscle)の神経筋接合部を用いて行なった実験について紹介しようと思う13)。
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