話題
シーラカンスの体液
平野 哲也
1
Tetsuya Hirano
1
1東京大学海洋研究所
pp.378-381
発行日 1981年8月15日
Published Date 1981/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903487
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Ⅰ.生きた化石
シーラカンス(Latimeria charumunae)は,1938年に発見された,非常に原始的な魚である。体長は1.5m,体重50kgにもなる大型の魚で,そのひれは他の魚と異なり体に直接ついているのではなく.うろこのある筋肉質の柄の先についている。そのため,特に胸びれなどは,魚のひれと,原始的な陸生脊椎動物の前足の中間型のようにみえ,いかにも陸生動物は,この魚から進化したのではないかと思わせる姿をしている。分類学上は,硬骨魚網,総鰭目の管椎亜目に属する。総鰭目は肺魚類とともに肉鰭類(内鼻孔魚類)とよばれる亜綱を形成し,鼻孔と口腔をつなぐ内鼻孔をもち,うきぶくろの代わりに肺が発達している。現に最初の両生類は,デボン紀末にこの総鰭類に属する淡水魚から生じたと云われている1)(図1)。
シーラカンス(Coelacanth)という名は,文字通り中空の棘"を意味し,この類のひれの棘条が中空であることからきている。シーラカンスの仲間である管椎亜目の魚は,従来化石としてしか知られておらず,7,000万年前に絶滅したと考えられていた。それが見たところ化石とほとんど変わらない姿で生きていたのが発見された訳で,動物学関係者のみならず,世界の注目を集めたのも当然で.まさに"生きた化石"と呼ぶにふさわしい魚である。
Copyright © 1981, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.