Japanese
English
主題 電解質・非電解質の能動輸送・1
魚類の小腸と膀胱における水,電解質の輸送とその調節
Water and ion movements in the intestine and the urinary bladder of the teleosts and their hormonal control
平野 哲也
1
,
内田 清一郎
1
Tetsuya Hirano
1
,
Seiitiro Utida
1
1東京大学海洋研究所
1Ocean Research Institute, University of Tokyo
pp.56-68
発行日 1972年4月15日
Published Date 1972/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902919
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われわれ人間も含め脊椎動物が生命を維持するには,血液やリンパ液などの内部環境の恒常性を維持することが必須の条件である。そのために神経系や内分泌系などの調節系がさまざまに関与していることは,よく知られている。この点,脊椎動物中もつとも下等な魚類においても同様であり,体液の浸透圧よりも低張な淡水,あるいは高張な海水中にすんでいて,たえず水負荷あるいは脱水の危険にさらされているにも拘らず,体液の浸透圧およびイオン組成を一定に保つている1)2)。
魚類,特に硬骨魚類の浸透圧調節機構の大要は第1図に示した通りである。淡水魚では,えらなどの体表面から,濃度勾配にしたがつて水が浸入し,塩が流出する。これを補うために多量のうすい尿を排泄し,えらから能動的にNaおよびClイオンを取入れて体液の浸透圧を維持している。また淡水魚はほとんど水を飲まない。海水中では逆に水分が周囲にとられ,塩が体内に浸入してくる。脱水による水分の喪失を補うために,海産魚は多量の水を飲み,腸から塩分とともに吸収する。過剰になつた1価イオンはえらから濃度勾配に逆らつて能動的に排出される。飲んだ海水中のCa++,Mg++などの2価イオンはほとんど吸収されないが,一部吸収されたものは,腎臓の尿細管から能動的に排出され,少量の尿とともに体外に出る1)-3)。
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