Japanese
English
研究のあゆみ
神経系の継ぎ目:シナプスの研究の回顧
Studies on junctions in the nervous system: Personal review on the author's works
内薗 耕二
1
Koji Uchizono
1
1東京大学,生理学研究所
pp.465-471
発行日 1977年12月15日
Published Date 1977/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903219
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
Ⅰ.興奮伝導の研究から興奮伝達の研究へ
私どもが終戦直後に研究室へ復帰したころ(昭和22年頃)の世界の神経研究の主流は興奮伝導の問題であった。たとえば体外に取り出された神経線維の興奮がどのようなメカニズムによって伝導されるかということが主たる関心事であった。この方面では日本の研究者が世界の研究者に伍して全く遜色のない研究を展開していた。とくに大きな神経幹の無数の神経線維の中から1本だけを無傷に取り出すというミクロの手術にかけては,日本人研究者の中に天才肌の人があって,世界的な注目を浴びていた。その中でひときわ目立つ存在は,当時目白にあった徳川研究所の田崎一二博士であった。同氏のまわりに戦争帰りの若い研究者たちがたむろしていた。
一方ではケンブリッジにイカの巨大神経線維を利用するグループがあって,このほうは天然に存在する単一線維を用いるという独自の研究方法を展開していた。巨大線維は体内ですでに単一線維として存在する神経であるから,とくに天才的なミクロの手術など必要としないわけである。
Copyright © 1977, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.