話題
University College London生理学教室における筋タンパク質の熱量測定
児玉 孝雄
1
Takao Kodama
1
1順天堂大学医学部薬理学教室
pp.230-234
発行日 1977年6月15日
Published Date 1977/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903191
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はじめに
昨年(1976年)の7月Cambridge大学生理学教室で開催された英国生理学会例会では,学会創立100年を祝って数々の記念行事が行われました。第1日目の午後には,神経興奮のNa+説を打ち立てたProf. A. L. Hodgkinの記念講演があり,講義室は200人以上の人々でいっぱいとなりました。講演の始まる直前にひとりの老紳士が杖をついて現われ,最前列の席についたとき,会場のあちらこちらからどよめきがおこりました。それが90歳の誕生日を目前にしたProf. A. V. Hillでした。よく知られているように,Prof. Hillは,1911年熱電堆と検流計の改良によって筋肉の熱産生の測定に初めて成功し(最初の試みは,エネルギー保存則で有名なHelmholtzによって,19世紀のなかばになされている),以後約50年にわたって熱産生を中心とした筋収縮の詳細な現象論的解析を積み重ね,収縮機構を考える基盤をつくり上げました。
筆者は,Prof. Hillが研究生活の大部分を過したロンドンのUniversity College London生理学教室で,筋収縮のエネルギー論的研究を進めているProf. D. R. WilkieとDr. R. C. Woledgeの許に1974年春からちょうど3年間滞在し,ミオシンATPaseの微少熱量測定(microcalorimetry)による研究を行う機会を得ました。
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