Japanese
English
講義
電子顕微鏡で観察されたウイルスの構造
Virus structur as observed in electron-microscopy
野々村 禎昭
1
,
Robley C. Williams
2
1東京大学医学部薬理学教室
2Molecular Biology and the Virus Laboratory University of California
pp.359-371
発行日 1975年8月15日
Published Date 1975/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903073
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今日はウイルスの,とくに電子顕微鏡でみられた構造についてお話しします。まず歴史的な背景についていくつかのことを述べ,ウイルス構造の基本について少しばかり触れて,それからネガティブ染色でみられたウイルスの電顕写真をおみせしましよう。これらの電顕写真は我ながら美しいものなのですが,これはウイルス粒子そのものが実に美事な構築物だからなのです。そのあとで少しばかり共同研究者のKenneth Richards博士と私が最近やりました,バクテリオファージの頭の中に詰め込まれ,包み込まれているDNAについての研究のお話しをして,最後にラムダファージのカプシッド(殻)構造決定に関連した最近の研究のお話しをしたいと思います。
私は最初のウイルスの電顕写真がとられたときのことを知つているような老人です。そしてアメリカ人なので,つい聴衆の皆さんにはききなれていないアメリカ的表現を使つてしまうことを許して下さい。さて,初期のウイルス粒子の電顕写真は小さな球状の塊(blobs)に過ぎませんでした。この言葉の意味は境界がはつきり区別できないような種類の構造のことです。いいかえれば構造といえるようなものをほとんど示していなかつた。ともいえましよう。このような事態は1944年にRalph Wyckoff博士と私がシャドーイング法を導入したことで改善されました。この方法はウイルスの三次元的外観をはつきりと示してくれたのです。
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