巻頭言
石油危機のなかで
赤羽 治郎
1
1信州大学
pp.265
発行日 1973年12月15日
Published Date 1973/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902969
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この12月初め(1973)から私どもの働く研究室の暖房は朝8時から1時間の通気に制限された。日中でも室温12°〜14℃くらいだから実験にも差支え,ことに動物の飼育条件は最低となつてしまつた。これからさきどうなるか,いまのところ予想もたたないという。
はげしいインフレ物不足で諸工業の生産は低下するだろうし,車も減るだろうから,水も大気もきれいになることであろう。しかしその反面,工場側は無理な生産性の強化に向うことが懸念される。これまでの環境汚染が経済優先の高度成長路線にのつかつて,人間軽視に発したことを思えば,この経済危機にさいしても,環境規制緩和をきびしく警戒しなければならないと思う。ニュースによると米国では,今次国会にマスキー法自動車排気ガス規制基準の実施をさらに1年延長しようとする修正案が提出されたというが,幸いにこれを下院が否決して,環境保全のなしくずし修正に歯止めしたことが報道された。
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