Japanese
English
総説
ショウジョウバエ神経系のモザイク解析
Mosaic analysis of Drosophila nervous system
堀田 凱樹
1
Yoshiki Hotta
1
1東京大学理学部物理学教室
1Department of Physics, Faculty of Science, University of Tokyo
pp.214-235
発行日 1972年10月15日
Published Date 1972/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902935
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
Ⅰ.はじめに
中枢神経系をごく単純化して考えると,感覚受容器が検出した時間的・空間的情報を,複雑なニューロン連鎖に沿つて伝える間に適当な処理をして,必要な情報を選択抽出して筋肉運動系に伝達するものである。したがつて生体が正常の行動を示すためには,感覚系・中枢・運動系のすべての素子が正確に連結されており正しく作動せねばならない。このニューロンの分化と回路網の形成は,本質的には個体発生の経過中に多数の遺伝子の指令に従つて行なわれるものであるから,その遺伝子に突然変異を誘発することにより中枢神経系変異種をつくることが可能な筈である。現在われわれの研究室ではショウジョウバエを材料として,アルキル化剤(エチルメタンスルホン酸)処理によつて高率に点突然変異を誘発し,行動異常を指標として感覚器・中枢神経および運動系の突然変異種の分離と解析をすすめている。遺伝子を利用して複雑なシステムに微小な誤り(perturbation)を導入しその結果を解析するというこの方法論は,分子生物学の領域では常套手段であるが中枢神経系への応用はまだ端緒が開かれたばかりである1)。ショウジョウバエに関して現在までに得られている行動異常変異種の具体例については別の機会2)に述べたので,ここでは個々の変異種を解析するにあたり第一に重要である異常の所在位置の解明法について述べる。
Copyright © 1972, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.