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特集 睡眠と脳回路の可塑性
ショウジョウバエを使った睡眠研究
Sleep of Fruit Fly
粂 和彦
1
Kazuhiko Kume
1
1熊本大学発生医学研究所幹細胞部門多能性幹細胞分野
pp.276-284
発行日 2009年8月15日
Published Date 2009/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100855
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睡眠は,人間なら誰もが毎晩1日の3分の1近い時間を費やす身近な生理現象だが,その制御機構や生理的意義には,まだ未解明の部分が多い。睡眠は単に休息のためだけにある受動的なプロセスだというとらえ方から,睡眠中に記憶の整理・固定・消去などの積極的な意義を見出すというとらえ方まで,さまざまな考え方が提唱されてきた。その中で,本特集で取り上げるように,記憶・学習,その基盤にある脳の可塑性と睡眠の関係が最近,特に注目されるようになっている。
睡眠は人間を代表とする高等脊椎動物の脳機能だと認識され,原則として脳波を元に定義される。そのため基礎研究にも哺乳動物が用いられることがほとんどであったが,昆虫などの無脊椎動物にも睡眠類似の行動が認められることは古くから知られていた。そして分子生物学の進歩から,脊椎動物と無脊椎動物の間にも保存された遺伝子が多数存在することが示されたこと,遺伝学と解析の容易さなどから人間の種々の疾患モデルとして使われるようになってきたこと,脳科学の進歩に伴い見た目や複雑さの多大な相違にかかわらず相同的な機能が多数見いだされてきたことなどから,睡眠という生物現象の神経基盤の解析にも古典的な哺乳類に加えて,新しいモデル動物を使った睡眠研究がこの数年で大きく発展してきた。その中には,ゴキブリ,ショジョウバエ,ザリガニ,ゼブラフィッシュ,線虫などが挙げられる1,2)。
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