今月の主題 ヘモグロビン異常
総説
酸素輸送とその調節
今井 清博
1
Kiyohiro IMAI
1
1大阪大学医学部第1生理学教室
pp.363-371
発行日 1986年4月15日
Published Date 1986/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912926
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はじめに
酸化的リン酸化反応を化学的エネルギー利用の手段としている生体においては,体の各細胞への酸素供給を,瞬時たりとも絶つことはできない.また同時に,この反応によって生ずる炭酸ガスを体外へ排泄しなければならない.循環器系は,このようなガス輸送を行うことを重要な使命として発達してきた.血液は,それらのガスの直接の担体であるほか,栄養素・ホルモンや熱の輸送,生体防御など,総じて生体の恒常性維持において重要な役割を演じていることは周知の事実である.
酸素輸送を行う主役は赤血球,とりわけその中のヘモグロビンである.ヘモグロビンは酸素や炭酸ガスの輸送を担うために,特別に分子進化を遂げた蛋白質で,その働きには巧妙な調節機能が備わっている.
本稿では,ヘモグロビンによる酸素輸送とその調節について解説し,その分子論的メカニズムをヘモグロビン分子の構造に基づいて説明する.さらに,異常ヘモグロビン血症における酸素輸送についても述べる.
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