Japanese
English
主題 視覚
視覚についての諸問題
Some problems in vision research
冨田 恒男
1
Tsuneo Tomita
1
1慶応義塾大学医学部生理学教室
1Department of Physiology, School of Medicine, Keio University
pp.2-6
発行日 1967年2月15日
Published Date 1967/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902711
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本号を初回として今後4回にわたり視覚を主題とした特集が行なわれ,それぞれの専門分野の方々のお話が伺えることになつた。いずれも視覚における問題点を内容とするものであることは間違いのない所で,したがつてここに私などの出る幕ではないが,うつかり引き受けてしまつた関係上いまさら引くこともならず,最小限の記述で責を塞がせて頂くことにする。また問題提起もあくまで一電気生理学徒としてのものであることを御諒承願いたい。
昨年(1966)8月独逸のTübingenで開かれた視覚のシンポジウム(Max-Plank-InstitutのReichardt教授主催)でカブトガニや昆虫の視器の電子顕微鏡による微細構造の報告がMiller,Lazansky,Braitenberg,Trujillo-Cenezと相次いで行なわれた後の休憩時間に,その方面の電気生理をやつているNIHのFuortesからRockefeller研究所のHartlineへの話しかけは振るつている。「どうやらわれわれ毎年一歩ずつ後退といつた感じだね」というのである。類題が続いた後の開放感といつたニュアンスと共に,電気生理学者が実験データを解釈しようとして頭に描く「できるだけ単純化されたモデル」といつたものとはまるで正反対に一途に複雑化する構造をこれでもかこれでもかとみせつけられることのとまどいに似た心境がこの一言によく出ている。Hartlineも全く同感といつた表情であつた。
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