連続座談会 脳を育む
Ⅰ.幼児・小児期
伊藤 正男
1
,
大津 由紀雄
2
,
小泉 英明
3
,
小西 行郎
4
,
繁下 和雄
5
,
藤田 道也
6
1理化学研究所脳科学総合研究センター
2慶應義塾大学言語文化研究所
3日立製作所基礎研究所
4埼玉医科大学小児科
5国立音楽大学
6浜松医科大学
pp.3-23
発行日 2001年2月15日
Published Date 2001/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902244
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脳を育む―脳科学の新たな課題
伊藤 『生体の科学』誌では毎年1号のために,今後発展しそうな重要な分野を取り上げて,その将来の大きな可能性を論じる座談会を開いています。今年は「脳を育む」という題を取り上げました。幼児・小児期,少年・青年期,成人・老年期の3回に分け,多彩な専門分野の方々をお招きして,人間の成長や教育の問題への脳科学の関わりについて,考察しようというものです。
今,盛んな脳科学を支えているのは,研究の対象としての脳の興味深さに加えて,脳神経系の病気を治し脳の老化を防ぐという医学的な要請と,脳型のコンピュータや人型のロボットの開発を助けるという情報科学技術上の期待です。さらに最近,正常な人間の発達成長を助けるという観点が注目されるようになりました。乳児,幼児から思春期,さらには成人期,高齢期に至るまで脳は成長し,変化する環境の中で学習し続けます。そこで,児童,学生時代の教育から,成人,高齢者の生涯教育に至るまで脳の正確な知識に基づいてもっと改善することができるのではないかと指摘されるようになりました。いろいろな国で教育の危機が叫ばれ,学校でのいじめや家庭内の暴力が大きな社会問題になっていますが,そういうことも脳に関する正確な知識に基礎を置いて考えるべきだという社会的な要請が強くなっています。
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