特集 母子衛生
幼児期における問題点
宇留野 勝正
1
1東京都本所保健所
pp.486-489
発行日 1962年9月15日
Published Date 1962/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202556
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日本の衛生状態は小児の問題に限らず,凡ての分野において先進国に比して20年は遅れているといわれていた。先年英国に留学して,ロンドンの公衆衛生大学の学長Prof.Dr.W.S.Waltonと会ったとき「英国ではジフテリアの予防接種は法によって強制されてはいないためか,うけるものは60%に過ぎない。それにもかかわらずジフテリアによる死亡数は年に数名に留まっている。それにひきかえ日本では強制接種の法があり,英国以上に接種率があると考えているにかかわらず年々数百名が死亡している。この両国の相違はどこにあるのだろうか」と意見を求めたことがあった。その時Dr.Waltonは「貴君の国は我々よりも全般的衛生状態が遅れているので,単なる予防接種だけの問題ではないのではないか」と答えたのである,この言葉こそ先進国のそのような保健状態の改善は決して一朝一夕に出来上ったものではないことを示されているようでよく味ってみるべき言葉と言えよう。
このような見解から日本の現在の幼児の問題を考えてみると,特に何をとりあぐべきかに迷うのであるが,一応思いつくままに2〜3の点につき述べてみようかと考える。すなわち発育と栄養,罹病と死亡,保健管理,心身障害児,養護等についてである。
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