特集 神経系に作用する薬物マニュアル1998
Ⅴ.その他
抗てんかん薬
兼子 直
1
,
岡田 元宏
1
Sunae Kaneko
1
,
Motohiro Okada
1
1弘前大学医学部神経精神医学講座
pp.512-514
発行日 1998年10月15日
Published Date 1998/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901654
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良性家族性新生児痙攣(BFNC)の責任遺伝子が,アセチルコリン受容体のニコチン性受容体α4サブユニット遺伝子近傍に存在するK+チャネル(KCNQ)であると最近報告され1,2),ノックアウトマウスを用いた実験から,K+チャネル(GIRK 2)遺伝子欠損が自発性痙攣発現に関与することから3),てんかんがイオンチャネル機能異常に起因するのではないかと推定される。一方,興奮性神経伝達物質glutamate(GLU)の再取り込み部位の遺伝子欠損が自発性痙攣発現に関与するとことも報告され3),興奮性神経伝達機構の機能亢進が痙攣発現に関与するいう従来の仮説を支持するものと考えられた。しかし,α-amino-3-hydroxy-5-methyl-isoxazole-4-propionate(AMPA)型GLU受容体遺伝子欠損が,逆に,自発痙攣を誘発し3),GLU系機能と痙攣発現に関する詳細はなお検討の余地がある。抑制性神経伝達物質γ-aminobutyric acid(GABA)の受容体,合成酵素の遺伝子欠損も自発性痙攣を生じさせ3),今後,分子生物学的に病態解明が進展しよう。1980年代後半から始まったGLU機能抑制,GABA機能増強を中心に,抗てんかん薬は開発されてきたが,今後は分子生物学的研究成果を踏まえた,K+チャネルなどのイオンチャネル機能を介した新たな抗てんかん薬の開発が注目される3)。
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