Japanese
English
連載講座 新しい観点からみた器官
嗅球―脳の未知機能分子の探索の場として
Olfactory bulb―as a model system for a molecular approach to the brain
森 憲作
1
Kensaku Mori
1
1(財)大阪バイオサイエンス研究所第3部門
pp.189-195
発行日 1994年4月15日
Published Date 1994/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900723
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嗅球は嗅覚神経系の第1次中枢で,終脳の吻側部に左右1対発達している。図1に示すように,ほとんどの哺乳類では主嗅球と副嗅球が隣りあって並んでおり,主嗅球は嗅上皮の嗅細胞からの入力(嗅神経入力)を担当し,副嗅球は鋤鼻器官に分布する受容細胞からの入力(鋤鼻神経入力)を担当している。主・副どちらの嗅球も,多くの層が整然と並んだ皮質構造をしている。たとえば主嗅球の内部をその表面から深層部へ向かってながめてみると(図1),嗅神経線維が複雑にいり混じって走行する嗅神経層,球形の神経叢である糸球が多数(約1千~3千個)シート状に並んだ糸球層,僧帽細胞や房飾細胞の樹状突起が分布し,顆粒細胞の樹状突起と樹状突起間相互シナプスを形成している外叢状層,僧帽細胞の細胞体が並んだ僧帽細胞層,顆粒細胞の細胞体の集まりが幾重にも重なった顆粒細胞層,脳室の周辺に位置し,僧帽細胞や房飾細胞の軸索が走行する白質などが観察される1,2)。
最近になって,嗅球ニューロンの匂い分子に対するチューニング特性の解析が進み,匂い分子情報の集約および処理装置としての嗅球神経回路の構造と機能が注目されている3-6)。著者らは,この機能的解析と並行して,嗅球が脳内の未知機能分子の探索の場として非常に適していると考え,約10年程前から,「モノクローナル抗体法」と「脳切片を用いた免疫組織化学的スクリーニング法」を組み合わせて,嗅球への分子的アプローチを始めた。
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