Japanese
English
特集 滑面小胞体をめぐる諸問題
SERの酸素不足に伴う形態変化
Structural alterations of the SER followed by anoxia
伴野 朋裕
1
,
河野 邦雄
1
Tomohiro Banno
1
,
Kunio Kohno
1
1筑波大学基礎医学系解剖
pp.659-665
発行日 1993年12月15日
Published Date 1993/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900675
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
一般に,神経細胞の樹状突起内には,管状の滑面小胞体(SER)がネットワークを形成して分布していると考えられている1)。ところが,小脳プルキンエ細胞の樹状突起内には,時々,積層小胞体あるいは層板小体とよばれる構造(滑面小胞体が層板状に重なったもの)が観察される2)。従来より,この層板小体は,固定不良あるいは細胞傷害のために生じたアーチファクトであると考えられてきたが見解は一致していなかった3-8)。最近,この層板小体にイノシトール三燐酸受容体(IP3受容体)が豊富に局在すると報告され,層板小体がCa2+動態に関連した何らかの生理的機能を有するのではないかと議論されるようになった10-15)。
われわれは,層板小体の形態を調べる目的で,多くのラットを用いてプルキンエ細胞樹状突起を観察したが,ほとんどのラットは,管状の滑面小胞体が観察されるだけであり,小脳のどの部位を観察しても層板小体はみられなかった(図1a)。しかし,固定前に数分間の無呼吸状態となったラットでは,逆に,管状の滑面小胞体がほとんどみられず,層板小体が多く観察された(図1b)。したがって,数分の無呼吸の間にプルキンエ細胞樹状突起内の滑面小胞体が,管状から層板状にダイナミックに形を変えるのではないかと考え,くわしく解析した。
Copyright © 1993, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.