特集 現代医学・生物学の仮説・学説
2.分子生物・遺伝学
DNA複製
岡崎 恒子
1
1名古屋大学理学部分子生物学科
pp.450-455
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900605
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概説
DNAの二重らせんは,逆向き(5'→3',3'→5')に配向する二本の相補ポリヌクレオチド鎖が相補塩基間(AとT,GとC)の水素結合により対合した規則的らせん構造をもつ。WatsonとCrickはDNAの二重らせんモデルを提唱した際(1953年),特徴として複製に際し親相補鎖がほどけ,生ずる二本の親一本鎖のおのおのを鋳型として新しい相補鎖(娘鎖)を合成できることを指摘した。この機構は,次世代分子の片方の鎖に親鎖由来の分子が保存されるので半保存的複製とよばれる。MeselsonとStahlは,密度標識実験により大腸菌DNAが半保存的に複製されることをみごとに証明した(1958年)。
DNA合成反応の主役はDNAポリメラーゼである。最初に発見されたのは大腸菌DNAポリメラーゼⅠで,Kornbergら(1956年)の研究により,合成反応に鋳型DNAを要求し,デオキシリボヌクレオチド5'三リン酸(dNT Ps)を基質として脱ピロリン酸反応によりdNMPを既存のDNA鎖にリン酸ジエステル結合により付加することが示された。合成される鎖の極性は鋳型鎖と逆平行である。以後さまざまな生物種からDNAポリメラーゼが分離され,また同一生物種にも役割の異なる複数種のDNAポリメラーゼが存在することが明らかとなった。これらすべてのDNAポリメラーゼに共通する性質としてさらに次の二点があげられる。
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