特集 現代医学・生物学の仮説・学説
1.細胞生物学
減数分裂の機構
今井 義幸
1
,
山本 正幸
2
1岡崎国立基礎生物学研究所
2東京大学理学部生物化学科
pp.446-447
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900604
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概説
減数分裂は,有性生殖に必要な配偶子の形成過程でみられる分裂様式であり、種の保存や進化に重要な役割を担っている。減数分裂は19世紀末にその存在が認識されるようになり,今世紀前半に細胞学的,遺伝学的な研究が始まつた。近年になって電子顕微鏡の発達によって超微構造に関する知見が深まり,さらに分子生物学などの新しい技術を用いることにより,その分子機構についての解析が行われている。減数分裂は,減数分裂前DNA合成,減数第一分裂,および減数第二分裂の3つの段階に分けることができる。2倍体の細胞は父方由来と母方由来のひと組の相同染色体をもつが,減数分裂前DNA合成によってそれぞれが複製し,これが連続した2回の分裂を経て1倍体の配偶子を形成する。減数第一分裂では,それぞれの相同染色体の複製によって生じた姉妹染色体が,一つのユニットとして一方の核へと分配される。これは体細胞分裂とは異なる,減数分裂に特異的な分裂様式である。これに対し,減数第二分裂では体細胞分裂と同様に,姉妹染色体が2つの核に均等に分配される。減数第一分裂の際には非常に高い頻度で相同的組み換えがおこり,遺伝情報の交換・再分配が行われる。この時期に染色体の示す複雑な挙動については,形態学的な知見が蓄積している。
動植物細胞の減数分裂機構を研究する際には、培養細胞を用いて減数分裂を再現するのが困難であるなど,研究手法上の課題が残されている。
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