特集 現代医学・生物学の仮説・学説
1.細胞生物学
細胞周期
岸本 健雄
1
1東京工業大学生命理工学部生体機構学科
pp.442-445
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900603
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概説
細胞の複製にとっての細胞周期上のキーポイントは,G1期中でG0期ではなくS期に向かうことを決定するスタート(regstriction)点1),G1/S期移行点,およびG2/M期移行点である。これらの通過を制御する主因子群は,CDKs(cyclin-dependent[cdc 2-related]kinases,サイクリン依存性[cdc 2関連]キナーゼ群)であると最近判明してきている(図1)。これはM期制御因子であるサイクリンB・cdc 2複合体(cycB・cdc2;cdc2キナーゼ)に始まるが,その前には,歴史的には3つのまったく独立した研究の流れ―MPF,cdc2,サイクリン―があった2-4)。
MPF:カエルなどの動物卵の成熟誘起に際し、卵成熟誘起ホルモンの卵表での効果を卵細胞質中で核に仲介する活性として,MPF(maturation-promoting factor,卵成熟促進因子)は同定された(Y. Masui,1971)。その後1980年頃には,MPFは,分類上の門や減数分裂と体細胞型分裂との違いをこえて,全真核細胞に普遍的なM期誘起因子(M-phase promoting factor)であることが確かとなった。
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