特集 〈研究室で役に立つ細胞株〉
Ⅰ.上皮細胞株
泌尿生殖器系上皮細胞
腎上皮細胞
アフリカミドリザル:Verots S3
大野 忠夫
1
1理化学研究所細胞銀行
pp.404
発行日 1992年10月15日
Published Date 1992/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900406
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■樹立の経緯
1988年12月20日,理化学研究所細胞銀行では,獨協医大・安村美博教授より,ビオチンを添加さえすればMEM培地のみで増殖できる細胞株Vero-317の寄託を受けた。この細胞はアフリカミドリザル腎由来の著名なVero糸細胞から選択されたものである。その上,Vero-317はMEM中のglutamineをglutamic acidに代えても,ゆっくりながら増殖可能で,そのため,培地全体をそのままオートクレーブにかけられる培地に変換できるという,従来のバイオテクノロジーでの生産用細胞として使用されている著名な細胞群にはない,注目すべき特微があった。
一方,COS-1細胞は,SV 40ウイルスDNAのうち複製開始点を欠落させたDNAを組み込んだプラスミドを,サル腎臓由来のCV-1細胞株にトランスフェクトし,染色体に安定的に組み込まれた細胞株として選択されたものである。この細胞の最大の特微は,組み込まれたSV 40遺伝子から,強いDNA複製促進因子であるlarge T抗原が多量産生されるが,ウイルスDNAの複製開始点がないため,ウイルス自身は産生されない点にある。
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