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特集 大脳皮質発達の化学的側面
大脳皮質における特異的領野の形成―モノクローナル抗体を用いた研究
Cortical areal specification: a study with an area-specific monoclonal antibody
有松 靖温
1
Yasuyoshi Arimatsu
1
1三菱化成生命科学研究所,脳神経形態学研究室
pp.132-137
発行日 1992年4月15日
Published Date 1992/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900329
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哺乳類の大脳皮質は運動野,体性感覚野,視覚野などの様々な領野によって構成され,それぞれ異なった機能的役割を担っている。しかしながらこれらの特異的な領野群がどのような機構によって形成されるかはほとんど解明されていない。主として形態学的な指標を用いた研究の成果に基づいて大脳皮質の特異化の機構が論じられているが,基本的な考え方は三つに分類される。第一は後成説的な考え方であり,領野の特異化は視床など他の神経組織の発生とともにその影響下に起こるというものである1)。第二の考え方は,大脳皮質は発生の比較的早い時期に皮質内部の機構により特異化されるというものである2)。第三はこれら二つの中間的なものであり,特異化は徐々に段階的に進行するというものである3)。
形態学的および生理学的な領野特異性に加えて,ニューロンの神経伝達物質や神経ペプチドおよびその受容体の種類など,大脳皮質各領野間の化学的な不均一性も指摘されている4-9)。しかし報告されているものの多くは量的な差異であって,ある領野だけに特異的な分子が存在するといった質的な差異は現在のところあまり知られていない。したがって化学的特性を指標にした領野の特異化の研究もきわめて少数にとどまっているのが現状である10)。
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