Japanese
English
特集 脳と免疫
脳・免疫系連関における交感神経系の役割
Immunomodulation by the sympathetic nervous system
堀 哲郎
1
,
片渕 俊彦
1
Tetsuro Hori
1
,
Toshihiko Katafuchi
1
1九州大学医学部第一生理学教室
pp.12-16
発行日 1991年2月15日
Published Date 1991/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900160
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いろいろな社会心理的ストレスは脳を介して免疫系を修飾する。この中枢神経系による免疫系の修飾機序として当初は,内分泌系を介する免疫系の制御が研究者の注目を集めた。それは糖質コルチコイドや,ACTHおよびβ-エンドルフィンなどの下垂体前葉ホルモンが,免疫反応(TおよびB細胞の増殖,インターフェロン-γの産生,ナチュラルキラー細胞活性など)を修飾することや,免疫担当細胞における各種ホルモンに対する受容体の発見などがあったためである。ところが,内分泌系による制御だけでは説明がつかない知見が次々と報告された。たとえば電気ショック時に起きるphytohemagglutinin(PHA)に対するリンパ球幼弱化反応の抑制は,副腎あるいは下垂体を摘除したラットにおいても見られる10,17)。また,条件付けによって起こる免疫反応抑制が必ずしもコルチゾールの分泌変化と相関していないこと3)なども明らかになった。
一方,最近,一次および二次リンパ器官を支配する自律神経系の形態像が詳しく解析され,とくに,交感神経のノルアドレナリン(NA)線維が動脈の周囲だけでなく,実質内のリンパ球が多数存在する領域にも分布することが見出された。機能的にも交感神経はリンパ球の分化,成長,増殖,遊走性などに影響を及ぼすことを示唆する知見も得られた。
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