Japanese
English
特集 LTPとLTD:その分子機構
PIレスポンスの役割
Role of PI response in LTP and LTD
伊藤 悦朗
1
,
吉岡 亨
2
Etsuro Ito
1
,
Tohru Yoshioka
2
1早稲田大学人間総合研究センター
2早稲田大学人間科学部人間基礎科学科
pp.458-463
発行日 1990年10月15日
Published Date 1990/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900128
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イノシトールリン脂質の一種ホスファチジルイノシトール4,5-2リン酸(PIP2)は,セカンドメッセンジャーとして有名なイノシトール3リン酸(IP3)とジアシルグリセロール(DG)を産生することはよく知られている。親水性のIP3は細胞内を拡散して細胞内小胞体(ER)に作用し,Ca2+の放出を引き起こす。また疎水性のDGは膜内に存在して,細胞質内をトランスロケートしてきたCキナーゼ(PKC)を活性化する。ここで最初に登場するPIP2を補給するのが,本章の主題であるイノシトールリン脂質の代謝回転(PIレスポンス)である。
これまでのLTPおよびLTDの実験の多くは,それぞれ海馬および小脳において遂行されてきた。そして,その海馬や小脳のニューロンには,PIレスポンスの構成要素である脂質・酵素・受容体が存在していることが報告されている。さらには,PIレスポンスを駆動する興奮性アミノ酸(グルタミン酸)の受容体が,海馬ニューロンや小脳プルキンエ細胞に多く存在することもすでに明らかになっており,これらとLTP・LTDとの関係についても活発な研究が始まっている。
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