特集 細胞接着
細胞接着―特集によせて
石川 春律
1
Harunori Ishikawa
1
1群馬大学医学部解剖学教室
pp.82-83
発行日 1990年4月15日
Published Date 1990/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900016
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細胞相互の連結は生物の多細胞化に不可欠の出来事である。細胞は相互に認識し,連結する。機械的,力学的連結はとくに接着(adhesion)と呼ばれる。接着は細胞同士のみでなく,細胞外マトリックスとの間にも起こる。この過程を通じて細胞は集合し,組織が構成され,器官,さらに個体が完成し,維持される。
多くの細胞間に接着のための特別な構造が存在することは古くから知られている。それには,上皮細胞間に見られる接着帯(zonula adherens)があり,また,デスモソーム(desmosome,接着斑)もある。ほかにも,これに類似した接着構造が認められる。細胞と細胞外マトリックスとの間の接着構造も含めて,細胞接着装置と総称される。しかし,特別な接着装置を形成していなくても接着機能を有している場合が多いことも忘れてはならない。接着は強さに差はあっても力学的連結を意味し,間腔閉鎖のための密着帯やコミュニケーションを主とするギャップ結合とは区別される。
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