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実験講座
トランスジェニックマウスによる発がんの研究
Transgenic mouse as tools for the study of oncogenesis
山村 研一
1
Kenichi Yamamura
1
1熊本大学医学部遺伝医学研究施設
pp.70-76
発行日 1990年2月15日
Published Date 1990/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900014
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現在のところがんを引き起こす原因として基本的には二つが考えられる。第一は,いわゆる活性化がん遺伝子によるものである。すなわち,何らかの原因でがん遺伝子の発現の異常が引き起こされるか,変異蛋白の産生が細胞がん化の主要因であると考えられるものである。現在,原因のよくわかっていないB型肝炎ウィルス(HBV)や成人性T細胞白血病ウイルス(HTLV-Ⅰ)などによるがん化も,あるいは未知のがん遺伝子の活性化による可能性もある。第二は,網膜芽細胞腫,Wilms腫瘍などの優性遺伝様式をとる疾患にみられるもので,いわゆるがんを抑制している遺伝子の欠失によると考えられるものである。最近の研究成果から推察すると,上記の基本的な変化がそれぞれ単独で細胞をがん化させているとは考え難い。むしろ複数の活性化がん遺伝子でがん化することもあれば,複数のがん遺伝子と複数のがん抑制遺伝子の欠失が必要なこともあるであろう。
いずれにしても遺伝学的立場からすれば,がん細胞は正常細胞のミュータントと位置づけることができる。このミュータントの性状をDNAレベルで明らかにするためには組み換えDNA技術が必須であろうし,実際多くの成果があがっている。この技術と細胞への遺伝子導入の技術とが駆使されてがん遺伝子の存在が明らかとなったが,がんは本来一個体の中で発生するものであり,invitroの系ではやはり解析能力に限界がある。
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