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Ⅰ.背景
近年,オープンサイエンスという考え方が研究手法の転換点となりつつあり,世界規模で普及し始めている1)。オープンサイエンスは,研究成果を可能な範囲で研究コミュニティに対して公開することで,研究分野全体の加速を図る考え方である2)。近年では,ジャーナル投稿時には機関リポジトリや専門分野のデータベースに実験データを登録し,その登録番号やIDを論文に付記し実験再現性を保証することが,論文の投稿規程により必須とされている。国内では内閣府から資金配分機関を通じて,研究者に先進的な研究データ管理・利活用とそのメタデータのリストの提出が求められている3)。共通メタデータの提出によるデータ管理・利活用は,2022年現在はムーンショット型研究開発制度の事業に対して先行的に義務化されているが,今後は,他の研究費助成事業にも拡大されていく見込みである4)。研究のプロジェクトマネージャー(研究主宰者を指す)は,データ管理・利活用のための情報基盤を準備し,研究プロジェクトを管理する必要がある5)。研究プロジェクトや機関ごとに研究データ基盤を整備すると,日本全体での研究データの集約が困難になるばかりではなく,研究データ基盤システムへの予算や人的コストの二重投資となるため避けるべきである。
オープンサイエンス基盤研究センター(Research Center for Open Science and Data Platform;RCOS)は,オープンサイエンスや研究データ基盤に関する日本の学術機関での課題解決のために,2017年に国立情報学研究所(National Institute of Informatics;NII)内に立ち上げられた。ムーンショット型研究開発制度・目標2(以下,MS目標2)の合原プロジェクト(以下,AMS)において,筆者らは「数理的連携研究,データベース構築およびELSI支援体制構築」班に属しており,「MS目標2の他のプロジェクトとの数理的連携研究および包括的データベース構築」が大目標となっている。そのなかで,山地グループは包括的未病データベース(以下,未病DB)構築を行う藤原グループに対し,構築を支援するための研究データ基盤を提供し,また未病分野固有の数理的手法の研究開発を普及するための計算機環境構築の支援を行っている。複数拠点間でのデータ共有を行いながら分野融合的な未病の時系列データを収集し,目標2全体の未病研究を加速させることを目指す。MS目標2に向けた未病DBの構想と研究分担について図1に示す。
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