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はじめに:洞察の時代
エリック・カンデル先生の「The Age of Insight」では,自然科学と人文科学の対話というのがメインテーマになっていまして,まさにこのAMS(Art Meets Medicine)の趣旨に合うものであるというふうに思います。それが,うまく紹介できたらと思います。脳科学と芸術といいましても,カンデル先生の場合は絵画から,精神,心の働きを洞察するというテーマです。洞察という言葉が私には非常に印象的です。原著は「The Age of Insight」(洞察の時代)というタイトルになっています。これ本当はそういう訳にしたかったんですけど,それじゃ何のことかわからないということで,『芸術・無意識・脳』というタイトルになっています。Insightっていうのは極めて大事です。いまや自然科学におきましては,できるだけその証拠・エビデンスをそろえて,そこから引き出せる結論は何か,敷衍できる法則は何かという考えで進んでいますが,それだけでいいのか,むしろ何かジャンプして新しいことを見つけていく努力も大事じゃないかというので,彼はinsightという言葉を使っています。序章に書いてありますが,目で集めた情報をどのようにしてヒトは像に結んで視覚情報を得ているのか? どのように記憶は形成されていくのか? 行動の生物学的基盤は何か? で,芸術はどのような経験に基づいて洞察を与えるのか? 最後に,芸術と科学の対話,そして芸術の役割を明らかにしていこうという志が最初の章に読めます。
今日お話するのは5つの項目に分かれていて,学問の流れを最初に簡単にお話して,視覚,見るとはどういうことか,そしてフロイトが情動・記憶・共感をどういうふうに考えていたかを説明させていただきます。そしてここからはかなり芸術鑑賞になるんですが,クリムトとかココシュカとかシーレというような,ウィーンで活躍した人の絵を見ながら楽しみたいと思います。最後に,無意識,言葉以前の問題ということについて,私自身感じていることに言及できたらというふうに思います。
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