特集 使える最新ケミカルバイオロジー
特集「使える最新ケミカルバイオロジー」によせて
浦野 泰照
1,2
1東京大学大学院薬学系研究科薬品代謝化学教室
2東京大学大学院医学系研究科生体情報学分野
pp.94
発行日 2015年4月15日
Published Date 2015/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200112
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医学・生物学研究を遂行する際,化学物質はなくてはならない存在である。実際,ほぼすべての実験操作において,特定の目的を実現するために“機能性化合物”を活用している。例えば,生化学研究の基本中の基本であるタンパク質の定量に,単に試料を乾燥させて秤量する乾燥重量法を用いることはまずなく,biuret法,Lowry法,更に,現在ではBradford法,BCA法などが汎用されている。また,ごく一般的な技法として,特定の酵素活性,シグナル経路を止めるためには“阻害剤”が,細胞の培養にはペニシリン,ストレプトマイシンなどの“抗生物質”が用いられているが,いずれも純然たる“化学”に基づく方法である。
このように,医学・生物学研究の進展に化学物質が大きな貢献をしていることは間違いないが,その大半は最初から自然界に存在している物ではなく,化学者が頭を捻って設計・開発した物である。このような生物学研究に資する新たな化学物質を創製する学問を“ケミカルバイオロジー”と呼び,現在では化学領域研究の一つの大きな柱となっている。本特集では,最新のケミカルバイオロジー研究のうち,特に生きている細胞の観察や操作に大きな寄与をする機能性化合物開発に関する最新の研究成果を紹介する。
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