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あとがき
野々村 禎昭
pp.628
発行日 2014年12月15日
Published Date 2014/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200091
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本号の特集「エピジェネティクスの今」の筆者の方々は現在第一線でご活躍の方々ばかりのお蔭で,最新の情報で取り組むことができました。エピジェネティクスというと獲得形質の遺伝という言葉が思い起こされます。これは文字どおりの意味でラマルクの用不用説とは無関係なのですが,どうもエピジェネティクスの関係者はこの言葉がお好きでないようですが,正に獲得形質の遺伝ではないでしょうか。もう一つルイセンコ説も思い出されます。春播き小麦を低温にさらすことによって冬播き小麦に変えられるという単純な農法に始まった事実が当時のスターリンの権威と結び付き,メンデルモルガン遺伝派を弾圧するという政治問題化して悲惨な結果に終わりましたが,これも単なる獲得形質の遺伝の問題だったのではないでしょうか。エピジェネティクスは,大勢はメンデルモルガン遺伝が続いていく中で,ほんの一部を異なったシステムが生命には存在している,と言ったら間違いなのでしょうか。本号には「仮説と戦略」に五十嵐氏が細胞外マトリックスの危機管理機構についての興味あふれるものを執筆していただきました。「仮説と戦略」という欄は果たして継続できるのかと疑っていたのですが,続いています。松本氏他のカイコの「解説」はこの教室の昆虫を扱う伝統が生かされています。葛西氏他の「実験講座」は全く新しいゲノム編集技術のジーンターゲットへの取り組みです。
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