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特集 エピジェネティクスの今
環境エピジェネティクス変化と疾患
Environment-induced epigenetic disorders
久保田 健夫
1
,
三宅 邦夫
1
,
針谷 夏代
1
,
望月 和樹
2
Kubota Takeo
1
,
Miyake Kunio
1
,
Hariya Natsuyo
1
,
Mochizuki Kazuki
2
1山梨大学医学部 環境遺伝医学講座
2山梨大学 生命環境学部 地域食物科学科
pp.547-552
発行日 2014年12月15日
Published Date 2014/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200077
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これまでエピジェネティクスは遺伝子発現調節の役割がよく知られてきた。実はエピジェネティクスにはもう一つの役割,“感染防御”がある。ヒトゲノムの大半は遺伝子の隙間の領域であり,そこは高度にDNAのメチル化修飾を受けている。古来,ヒトに感染したウイルスがゲノムに侵入し,さらに侵入した配列(レトロウイルス配列)はゲノムのあちこちにコピーされ,次第にこの配列が増え,繰り返し配列となった。感染を受けた宿主(ヒト)としては侵入したウイルス配列が重要な遺伝子に入り込むことを防ぐため, そのコピー機能(レトロトランスポジション)を抑制するため,DNAをメチル化させ不活化させた。その結果,ヒトゲノムの大半はメチル化された繰り返し配列で構成されるようになった1,2)。
一方,エピジェネティクス疾患研究は,ゲノムインプリンティングやX染色体不活化が関係する先天性疾患から始まり,最近は糖尿病や精神疾患などの生活習慣や環境に起因する後天性疾患に広がってきた。上記のとおり,エピジェネティクスは元々感染という環境ストレスへの応答メカニズムであったことから,栄養ストレスや精神ストレスで発症するこれらの疾患の研究に発展したことは自然な流れであったのかもしれない。
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