特集 細胞核―構造と機能
1.核 膜
Nucleophagy
林 由起子
1
Yukiko Hayashi
1
1国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第一部
pp.374-375
発行日 2011年10月15日
Published Date 2011/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101173
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核内膜および核ラミナに存在するタンパク質の異常が原因となる遺伝病は,「nuclear envelopathy;核膜病」と総称され,骨格筋疾患,心疾患,中枢神経障害,末梢神経障害,代謝異常,発育・発達異常や早老症候群といった様々な疾患を引き起こすことが相次いで明らかになってきている。この核膜病の発見の端緒となったのがエメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー(EDMD)である。
EDMDは通常,小児期に発症する筋ジストロフィーで,1)肩甲下腿優位の進行性の筋萎縮と筋力低下,2)病早期からの肘,足関節および後頸部の拘縮,3)心伝導障害を伴う心筋症を臨床的三主徴とする遺伝性疾患である。染色体Xq28に存在するエメリン遺伝子(EMD)の変異によるX染色体劣性型(X-EDMD)と,染色体1q21.2に存在するA型ラミン遺伝子(LMNA)の変異による常染色体優性(AD-EDMD)あるいは劣性型(AR-EDMD)が多いが,同じく核膜タンパク質であるネスプリンをコードするSYNE1/2やLUMAの遺伝子変異によるEDMDも少数例報告されている。EDMDは遺伝形式や原因遺伝子にかかわらずその症状はよく似ており,臨床症状から原因遺伝子を推測することは困難である。
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