特集 シナプスをめぐるシグナリング
1.受容体
シナプス形成におけるLRP4シグナリングの関与
棚橋 浩
1
,
鈴木 龍雄
1
Hiroshi Tanahashi
1
,
Tatsuo Suzuki
1
1信州大学大学院 医学系研究科 加齢適応医科学系独立専攻 神経可塑性学分野
pp.392-393
発行日 2010年10月15日
Published Date 2010/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101020
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LRP4の分子特性
最初に,本稿で扱うLow density lipoprotein receptor-related protein 4(LRP4)は,Tomitaらが報告している同名の分子(現在の公称はcorin)とは異なる分子である。LRP4はLDL-receptorファミリーのメンバーの一つで,その完全長cDNAのクローニングと特性についての最初の報告は筆者らによってなされた1)。マウス,ラット,ヒトLRP4は1905アミノ酸からなる,type Ⅰ-1回膜貫通タンパク質である。細胞外領域にリガンド結合部位,C端側の細胞質領域にエンドサイトーシスに関わるコート小胞への集積シグナル(NPXYモチーフ),C末端にPDZドメイン結合配列(ESQV)を持つ。LRP4はこの配列を介してPSD-95,SAP97と結合し,シナプス後肥厚部(PSD)に局在している1)。カルモジュリンキナーゼⅡ(CaMKⅡ)により細胞質領域のSer1887,Ser1900がリン酸化され,後者のリン酸化によりPSD-95,SAP97との結合が阻害される1)。これらのことは,神経活動によってPSDのLRP4複合体相互作用が制御される可能性を示唆している。これまでに6種のリガンド,apoE2),F-spondin3),agrin4,5),Wise(表*1),Dickkopf1(表*1),Sclerostin(表*1)が同定されている。脳のLRP4はコレステロールの取り込み以外にも複数の機能に関係していると考えられる。
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