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特集 mTORをめぐるシグナルタンパク
子宮癌の治療ターゲットとしてのPI3K-mTOR経路
PI3K-mTOR signaling pathway as a therapeutic target for uterine cancer
水本 泰成
1
,
京 哲
1
Yasunari Mizumoto
1
,
Satoru Kyo
1
1金沢大学大学院医学系研究科産婦人科
pp.535-540
発行日 2008年12月15日
Published Date 2008/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100812
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上皮性の子宮癌は子宮頸癌と子宮内膜癌(子宮体癌)に大別されるが,各々の発生機序は全く異なる。子宮頸癌はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染により子宮頸部異形成から進展して起こる。HPV以外の発癌因子については確定的なものは見出されていないが,様々な遺伝子や染色体の異常が報告されている。しかしながら,PI3K-Akt-mTORの経路の関与を示す成績は現在までに得られていない。
これまでは子宮癌の多くは頸癌であったが,最近わが国では子宮内膜癌が激増している。日本産婦人科学会に登録された265施設の報告では,2006年度は4381名が罹患し,子宮頸癌とほぼ同様の頻度を示す1)。子宮内膜癌の63%,8.3%がそれぞれ臨床進行期Ⅰ期,Ⅱ期で,その多くが手術療法単独あるいは手術療法+放射線療法にて根治可能である。しかし,進行癌や再発癌に対して行われている放射線療法,化学療法,ホルモン療法の奏功率は10-20%と低く,生存期間の中央値はおおむね1年程度とする報告が多い。したがって,子宮内膜癌発症,進展の分子機構の解明および治療法の開発は子宮内膜癌治療成績の向上に必須である。子宮内膜癌において,PTEN遺伝子異常が高頻度に認められ,PI3K-Akt経路がその発生に関与するとする可能性が指摘されている。そこで,本稿では子宮内膜癌の分子生物学的特徴を概説するとともに,PI3K-mTOR経路をターゲットとした治療戦略の持つ可能性につき言及する。
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