Japanese
English
特集 mTORをめぐるシグナルタンパク
変異TSC2とスモールGタンパク質の活性化
Mutated tumor suppressor gene TSC2 and small-GTP binding protein activity
山本 祐司
1
,
田所 忠弘
1
,
鈴木 司
1
Yuji Yamamoto
1
,
Tadahiro Tadokoro
1
,
Tsukasa Suzuki
1
1東京農業大学応用生物科学部生物応用化学科栄養生化学研究室
pp.504-510
発行日 2008年12月15日
Published Date 2008/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100807
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TSC1,TSC2遺伝子は,家族性腫瘍の一つである結節性硬化症の原因遺伝子として同定された癌抑制遺伝子ファミリーの一つであり,それぞれhamartin,tuberinタンパク質をコードする。複合体を形成したhamartinとtuberinはスモールGタンパク質ファミリーのRhebを介し,インスリンシグナル経路内のタンパク質合成をつかさどるmTORを負に制御することが明らかとなったものの,この単一経路だけでは両遺伝子の機能欠失により認められる多岐にわたる細胞機能異常についての説明が十分とはいえないのが現状である。そのことからhamartinとtuberinは多様な機能を持つシグナル因子(multifunctional protein)として作用する可能性が示唆された。
本稿では,tuberinの細胞遊走への関与に着目し,分子レベルでそのメカニズムを明らかにすることにより,結節性硬化症の発症機構のみならず,細胞遊走の新規シグナル経路の解明につながるものと考えた。一般に細胞遊走は,スモールGタンパク質であるRhoA,Cdc42,Rac1に代表的されるタンパク質であるRhoファミリーによりコントロールされるが,筆者らはtuberinがその中でもRac1の活性を制御し,されにRac1を介し活性酸素種の産生にも寄与することを明らかにした1)。
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