Japanese
English
特集 創薬ゲノミクス・創薬プロテオミクス・創薬インフォマティクス
第2部 総説
Ⅲ 創薬インフォマティクス
プロテオーム創薬へのin silicoアプローチ
In silico approaches to proteomic drug discovery
松尾 洋
1
Yo Matsuo
1
1理化学研究所ゲノム科学総合研究センタータンパク質構造・機能研究グループ計算プロテオミクス研究チーム
pp.449-457
発行日 2003年10月15日
Published Date 2003/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100785
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
先頃(2003年4月14日)完了が宣言されたヒト全ゲノム配列決定計画は,その完了以前から創薬に大きな影響を与えてきた。配列決定により次々と列挙される遺伝子が,各種細胞の様々な状況とタイミングにおいてどのようなパターンで発現しているかを網羅的に調べることが可能になった。そして,それら遺伝子のどれがどのような疾患と関連しているかを系統的に調べることが可能になった。また,遺伝子の多型を網羅的に調べることが可能になり,それぞれの多型と疾患発症リスクとの相関が系統的に調べられ始めた。これらの状況を活かすことにより,ゲノム創薬と呼ばれるアプローチが可能になった。
一方,ヒトの持つ遺伝子の総体すなわちタンパク質の総体(プロテオーム)があらかじめ与えられることにより,各種細胞中に存在するタンパク質群を網羅的に同定することが可能になった。任意のタンパク質のサンプルを得ることが大幅に容易になった。そして,各タンパク質が他のどのような分子とどのように相互作用するか(つまりタンパク質の分子機能)を網羅的に調べることが可能になった。また,それら分子機能を実現させている立体構造を網羅的に決定することが可能になった。こうして,タンパク質を中心とする分子のネットワークが構成するシステムの姿と,それら分子システムと生理的機能との関係が,次々に明かされようとしている。この状況を受けて,プロテオーム創薬と呼ぶべきアプローチが可能になった。
Copyright © 2003, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.