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特集 分子進化学の現在
分子レベルから見た種分化種形成―カワスズメ科魚類を用いた研究
A study of the speciation of East African cichlid fishes at molecular level
寺井 洋平
1
,
岡田 典弘
1
Yohey Terai
1
,
Norihiro Okada
1
1東京工業大学大学院生命理工学研究科生体システム専攻
pp.190-197
発行日 2004年6月15日
Published Date 2004/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100691
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現在地球上には形態的,生態的に多種多様な生物が生息しており,研究者ばかりでなく一般の人々にも大変興味を持たれている。私達のまわりでも植物,昆虫,魚,鳥獣などの動植物を日常的に目にすることができる。これら生物の種数はこれまで知られているだけで約150万種ともいわれており,このような生物の多様性は進化の過程で獲得されてきたと考えられている。生物が多様性を獲得してきた過程において種と種が分かれ新しい種が形成されること,つまり種分化種形成が重要であったと考えられている。一つの集団が二つに分かれる,つまり種と種が分かれるには集団間の遺伝的交流の断絶(生殖的隔離)が必須であり,新しい生態的地位(ニッチ)に適応した種が形成されるには新しい形質の獲得が重要であると考えられる。種分化もしくは種形成のメカニズムについてこれまでいくつもの説やモデルが提唱されてきた。しかしそれの分子レベルのメカニズム,つまりどのような遺伝子が関与し,その遺伝子にいつ変異がはいり,どのような選択圧を受けるかはこれまで謎のままであり,その研究を行うためのアプローチもほとんどない状況であった。近年,私達の研究グループ(東京工業大学およびドイツマックスプランク研究所)の研究によりアフリカヴィクトリア湖産カワスズメ科魚類が種分化種形成を分子レベルで研究するために非常に適した生物であることが明らかにされてきた。
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