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ヒトゲノム完全配列が2003年4月に発表され,ポストゲノムシークエンス時代を迎えた。DNA配列情報は既知のものとした上で,生命科学研究の方向性は,細胞の機能発現の解明に向けられており,ゲノミクスからプロテオミクス研究,とくにRNAやタンパク質分子の立体構造の解析やDNAマイクロアレイを駆使したゲノムワイドな遺伝子発現解析,さらにヒト以外生物種のゲノムワイドな種間比較研究やナノテクノロジーを組み合わせた新しい分野に至るまで多岐にわたっている。細胞の機能発現の主要な場である「核」にはDNA,RNA,タンパク質,その他の核内分子の存在が知られているが,構造物としてはDNAがヒストンと共に高度に折りたたまれた「染色体」がその大部分を占めている。染色体は間期の核ではクロマチンファイバーがほどけて入り混じった状態で,あたかもスープの中のスパゲッティーのように想像されていた。しかし,近年開発された3D-FISH(three-dimensinal fluorescence in situ hybridization)法により,間期核における染色体は高度に区画化され,染色体腕領域,バンド領域,サブバンド領域に至るまで,異なる染色体に由来するクロマチンファイバーが互いに混ざり合うことのない「染色体テリトリー」構造を持つということが,視覚的に明らかにされている1)。「染色体テリトリー」という用語はドイツの細胞生物学者Theodor Boveriによって,今から約95年も遡った1909年に提唱されており,けっして最近用いられた用語ではなく,その研究の歴史は古い2,3)。本稿では,3D-FISH法による染色体テリトリーの核内配置イメージング手法について,霊長類細胞での実験データを例に,関連する最近の研究動向とともに紹介したい。
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