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複雑かつ精巧な神経回路網は,神経細胞体から伸長して標的細胞へ到達した軸索突起により構成される。伸長過程にある軸索突起の先端部は成長円錐と呼ばれ,その周囲環境を感受し目的の方向へ移動する機能を有している1)。二次元培養基質上での成長円錐は,活発に運動する扁平な膜突起である周辺部,細胞内小器官に富んだ中心部,および両者の境界領域である移行帯から構成される(図1)。成長円錐周辺部に存在する膜突起は,その形態およびアクチン線維の重合様式により糸状突起と膜様突起に分類される。三次元培養基質内での成長円錐は,文字通り円錐状の構造体から糸状・膜様突起が突出した形態を示し,生体の神経組織での形態と類似する。
成長円錐周辺部にはアクチン線維が豊富に存在し,成長円錐中心部には主として微小管が存在する。平行に走るアクチン線維の束が糸状突起の形態を支持し,膜様突起にはランダムに交差したアクチン線維のメッシュと糸状突起へと伸びるアクチン線維束が存在する2)。これらのアクチン線維は,神経接着分子などの膜貫通蛋白の細胞内領域に結合することにより,成長円錐周囲環境と生化学的・力学的に相互作用する。一方,微小管は細胞内小器官の輸送(神経細胞体-軸索突起-成長円錐間の両方向性の輸送)に中心的な役割を果たしており3),成長円錐周辺部が必要とする分子も微小管を介して運ばれる。さらに最近では,微小管とアクチン線維の相互作用が注目されており4),成長円錐周辺部と中心部が協調して軸索を伸長するメカニズムが明らかになりつつある。本稿では,細胞骨格(アクチン線維と微小管)と神経接着分子の役割,さらに成長円錐を構成する細胞膜の機能に焦点を絞り,軸索伸長の分子機構を概説する。
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