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アンジオポイエチン(Ang)は血管新生・形成に重要な役割を持つ因子として脚光を浴びている。Angは血管内皮細胞および血管周囲細胞に発現する受容体型チロシンキナーゼTie-2のリガンドとして同定された可溶性蛋白で,現在までにAng-1から-4までの4種類が知られている。Tie-2結合後そのチロシンキナーゼドメインの自己リン酸化を惹起するAng-1,-4はTie-2アゴニスト,惹起しないAng-2,-3はTie-2アンタゴニストとして機能すると考えられてきた1)。その仮説は,Tie-2とAng-1のノックアウトマウスが血管の発育障害と心臓の低形成により,それぞれ胎生9.5日と12.5日に死亡すること,さらにその現象が胎生9.5日に死亡するAng-2の過剰発現マウスでの所見に酷似することからも支持される1,2)。しかし,その後の研究でAng-2のノックアウトマウスがリンパ管の低形成により生後2週間以内に死亡することが明らかとなり,リンパ脈管系に対してはAng-2がアゴニストとして作用することが示された3)。一方,Tie受容体ファミリーにはTie-2と50%のホモロジーを有するTie-1が存在するが,そのリガンドは明かにされていない。しかし,Tie-1のノックアウトマウスが胎生13.5日から出生までの時期に血管内皮細胞の統合性の障害により浮腫と出血をきたして死亡することから,Tie-1リガンドも血管新生に重要な役割を果たすことが示唆されている1)。
さて,Ang-1はin vivoで血管新生を刺激するが,in vitroにおいては血管内皮細胞のアポトーシスを阻害するものの,その増殖刺激は認められない。一方,血管新生因子のVEGFはin vivoのみならずin vitroでも血管内皮細胞の増殖を刺激する。他方,VEGFが誘導した血管は易漏出性であるが,Ang-1が誘導した血管は非漏出性である。Ang-1とVEGFが共発現すると,血管新生には相乗効果が現れるものの,Ang-1特有の漏出抵抗性脈管が形成される1,2)。逆にAng-2とVEGFが共発現すると,漏出性毛細血管が増殖し,浮腫をきたす4)。これらの現象を正常血管と腫瘍血管の組織所見に照らして考えると次のような解釈が成り立つ。
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