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特集 構造生物学の現在と今後の展開
NMR分光法とクライオ電子顕微鏡法によるアクチンフィラメント研究―筋肉収縮・弛緩における分子スイッチ機構
Structural basis for the molecular switching in regulatory mechanism of muscle contraction revealed by electron cryo-microscopy and NMR spectroscopy
若林 健之
1
,
村上 健次
1
Takeyuki Wakabayashi
1
,
Kenji Murakami
1
1帝京大学理工学部バイオサイエンス学科
pp.593-605
発行日 2005年12月15日
Published Date 2005/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100418
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骨格筋と心筋では,細胞内カルシウム濃度が1μMを越えるとアクチンを主体とする“細いフィラメント”と“太いフィラメント”を構成するミオシンとの相互作用が活性化され1),二種類のフィラメントは滑りあって筋収縮が生じる。カルシウムイオンの標的は細いフィラメントに組み込まれたトロポニンであり,カルシウムによるトロポニンの構造変化は収縮制御のスイッチのトリガーとなる。この変化はトロポミオシンを介してアクチンに伝達される。
トロポニンは三つのコンポーネントからなっている。TnT(Tropomyosin-binding)はトロポミオシンと結合し,TnC(Calcium-binding)はカルシウムを結合し,TnI(Inhibitory)はアクチンと結合して収縮を阻害する。カルシウムを結合したTnCはTnIと強く結合し,TnIの阻害活性を喪失させる。TnCとCa2+の結合は結晶解析やNMR分光法により原子レベルで詳しく研究されてきた。しかし,筋弛緩の分子機構を明らかにする上で重要なTnIとアクチンの結合の原子レベルでの詳細は不詳であった。本稿では主にこの点について述べたい。
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