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特集 脳の遺伝子―どこでどのように働いているのか
海馬における翻訳因子の発現とその発達変化
Expression of translation factors in Hippocampus and their developmental changes
武井 延之
1
,
稲村 直子
1
Nobuyuki Takei
1
,
Naoko Inamura
1
1新潟大学脳研究所分子神経生物学
pp.262-265
発行日 2005年8月15日
Published Date 2005/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100397
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遺伝子発現は,ゲノム上のDNA情報を転写,スプライシング,翻訳によってRNA情報を介して蛋白質へと変換している一連の過程である。それぞれのステップにおいて厳密で巧妙な調節機構があり,時には協調的にまた時には独立に調節を受けている。転写調節の研究に比べて遅れていた翻訳調節の研究も近年急速に進んできた。増殖性の細胞では翻訳の調節は細胞周期と密接な関係があり,成長因子やホルモン,グルコースやアミノ酸などの増殖シグナルによって活性化される。ニューロンは増殖しない細胞なので,おそらく活発に活動する際にシナプス機能蛋白質などの量を増やすために活性化するのではないかと考えられていた。実際,蛋白合成阻害剤を用いた薬理学的実験から,神経の可塑的変化である長期増強,長期抑圧などのパラダイムや個体での学習・記憶過程に新規の蛋白合成が必要だという報告がなされている1)。
一方,われわれは初代培養神経細胞での翻訳調節機構について研究を行い,神経栄養因子であるBDNF(brain-derived neurotrophic factor)が神経細胞のシナプス近傍で翻訳開始過程を活性化するメカニズムについて報告してきている2-4)。また,空間学習獲得時に翻訳過程の活性化がおこることも見出しており(未発表),神経系での翻訳調節機構と脳高次機能の関連に注目があつまっている5)。
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