特集 生物進化の分子マップ
24.その他
遺伝子から見た脊椎動物の軟骨の起源
和田 洋
1
,
米田 雅彦
2
Hiroshi Wada
1
,
Masahiko Yoneda
2
1筑波大学大学院生命環境科学研究科
2愛知県立看護大学
pp.524-526
発行日 2006年10月15日
Published Date 2006/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100343
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軟骨は脊椎動物で新規に獲得された構造である。進化の過程で新たな構造が進化するとき,魚類が肺をうきぶくろとして用いたように,ある構造をそれまで果たしてきたものとは異なった用途に使うこと(延用co-option,あるいは外適応exap-tationと呼ばれる)によってもたらされることが多い。しかし,軟骨細胞のように,全く新しいタイプの細胞が出現することもある。このような新しい細胞あるいは構造の出現は,どのような分子進化過程によってもたらされるのだろうか。
軟骨の主要な構成タンパク質はコラーゲンである。中でも線維性のタイプ2コラーゲンと呼ばれるものが最も多く含まれており,同じく線維性タイプ11コラーゲンも含まれている。脊椎動物には11の線維性コラーゲン遺伝子があり,これらは大きく三つに分類される(図1)。軟骨をもたないホヤやナメクジウオにも,これら三つのグループに属する線維性コラーゲンの遺伝子があり,ホヤと脊椎動物の系統に分かれた後に,遺伝子重複によってホヤでは四つの遺伝子が,脊椎動物では11個の遺伝子が進化してきた1)。ホヤの四つの遺伝子はいずれも脊索で発現していることから,脊索動物の祖先における線維性コラーゲンの一つの機能は脊索鞘の形成にあったと考えられる。脊索鞘などに用いられていた線維性コラーゲン遺伝子が,脊椎動物の祖先でおこった遺伝子重複によりレパートリーを増やし,それらが軟骨や骨の基質として延用されていったという歴史が見てとれる。
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