特集 生物進化の分子マップ
22.形態形成/分化
性決定遺伝子SryおよびSoxファミリーの分子進化
長井 光三
1
Kozo Nagai
1
1東京医科大学医学部生化学教室
pp.506-507
発行日 2006年10月15日
Published Date 2006/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100334
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有性生殖をする生物の性決定機構は,分子生物学や生化学さらに医学的にも興味深い。胚発生後の性決定は無脊椎動物, 脊椎動物の魚類, 両性類,爬虫類,鳥類および哺乳類で各々の方式が異なる。例えば,無脊椎動物のショウジョウバエではY染色体は性決定に無関係で,X染色体と常染色体(A)の比率X/Aで雌か雄かが決まる。ところが,鳥類はW染色体が雌性決定因子となり,ZZは雄で, ZWで雌となるが,爬虫類では卵孵化温度により性が容易に転換してしまう。一方,哺乳類ではX-とY染色体を保有して後述のSryが雄性を決定する。
1990年の哺乳類の性決定遺伝子としてY染色体短腕上のPAR近傍におけるSryの発見は,ヒトのXY雌性表現の原因が遺伝子変異によることの解明などが端緒となったが,また同年にマウスのSryも報告された。さらに1991年,XX受精卵へのクローン化したSryのみを含む14KbDNAの単独導入により,精巣をもつトランスジェニックXX雄性マウスの発生で具体的に性決定機能が同定された。その後,有袋類を含む数十種の哺乳類のY染色体上のSryが報告された。
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